戦術とは「人」「物」「金」「時間」「情報」を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する術のことです。
「人」「物」「金」「時間」「情報」の5項目を「経営資源(マネジメント・リソース)」と言います。
「人」とはスポーツの場合、プレイヤーのパフォーマンスです。上手か下手か、経験が大きか少ないか等を指します。
「物」とは、練習場所、道具、機器など。「金」は経済力のことで資金が潤沢にあれば、あなたがスタメンに入るために様々な試みが出来ます。「時間」は誰にとっても平等に与えられていますが、有効に使えるか否かです。「情報」は自分を正確に評価すること、チームに求められている能力などを正確に理解していることです。
この「人」「物」「金」「時間」「情報」の5項目(マネジメント・リソース)」を、どう使うかによって、あなたがスタメンに入れるか否かを大きく左右します。

戦術はマネジメント・リソースを集中させること
野球競技に必要な能力を「走る速さ」「スタート」「肩の強さ」「コントロール」「長打力」「選球眼」の6項目を例に説明しましょう。
「天才」でない多くのプレイヤーは、6項目に対して400点くらいの持ち点しかありません。しかし多くの指導者は、6項目のバランスを求めます。つまり弱点を克服するように指導されるケースが多いのです。では上手く弱点を克服することが出来たら、400点を均等に6項目に分配すると、1項目66.6点になります。どの項目も66.6点のバランスの取れたプレイヤーが、スタメンに入れると思いますか? 多くの場合、スタメン入は難しいでしょう。
そこであなたに与えられたマネジメント・リソースを1点に集中させます。例えば「スタート」の能力を100点まで上げる為には、他の練習を止めて「スタート」に集中することです。85点や90点で終わってしまったらスタメンには入れません。100点まで上げること、同世代では誰にも敗けない「スタート」が出来るようになる必要があります。
では、練習に練習を重ねて「スタート」が100点に達したとしましょう。持ち点が400点のままとします。残りの5項目は練習をしてませんのでパフォーマンスが落ちることになります。さて残り5項目は何点になるでしょう。

400点のうちスタートに100点を集めたため、残りは300点。これを残り5項目で均等分割すると、300÷5=60(点)になります。バランスがいいケースと比べて6点しか落ちていません。
あなたが監督なら、どちらのプレイヤーをスタメンに選びますか?
①バランスがいいけれど6項目とも66.6点のプレイヤー
②1項目は100点でチーム内で1番、だが他の5項目が60点のプレイヤー

②のプレイヤーを選ぶのではないでしょうか。
特徴の無いバランスのいい、6項目共に66点のプレイヤーを目指していてはスタメンに入れません。
自分の得意な項目を作り出すために、マネジメント・リソースを集中させて、バランスの悪いプレイヤーになることです。

次回は、自分の得意分野を決める方法です。
マネジメント・リソースを1点に集中させることは「掛け」になります。得意分野を正確に決められることが、非常に重要です。
その方法を具体的にお伝えします。

Key word
①戦略 = やらないことを決めて、バランスを崩して自分の得意分野を作ること
②マネジメント・リソース = 人、モノ、お金、時間、情報